第2章 影
カーテンの隙間から差し込む朝の光が眩しく
蘭花は目を覚ました
ベッドのシーツは既に冷たく、
隣に味野の気配が早い時間から居ないことに気付く
彼女は体を起こし昨夜の記憶を辿ろうとした。
味野の震える手、
彼の涙と怒りに満ちた声
そして…
彼女の心に残る、今にも壊れそうな温もり
「味野さん…?」
蘭花は小さく呼びかけたが、
返事はなく家の中は静まり返っていた。
彼女はベッドから降り着替えたのち裸足でリビングへ向かう。
テーブルの上に小さく切り取られた地図が置いてあるのに
気づき粗末な紙切れに
赤いペンで丸がつけられ番地が走り書きされていた。
「これ…何?」
蘭花は地図を手に取り胸に押し当てた
味野の意図がわからない
だが、昨夜の彼の言葉が耳に残っている
「お前は烏の娘だ。俺はお前を…もう愛せない」
彼女の胸が締め付けられ苦しさを伴う
それでも味野が残したこの地図には
何か意味があるはず…と信じた。
蘭花はパーカーを羽織り家を出ていく
海風が彼女の髪を揺らし冷たい空気が肌を刺した
地図を握りしめ、彼女は歩き出す。