第13章 彼と....
電話が切れた後味野の耳に
蘭花の「ありがとう」がまだ響いていた
警官として長年培った勘が、
彼女の声の裏に何か隠れていると告げている。
すべてを疑う癖が蘭花の純粋な言葉に影を落とし、
味野は少し自分自身を責めた
でも声色でわかってしまう。
彼女になにかあるのだろうと。
敵だとわかっていても、
腕の傷が彼の心を縛っていた
彼は呟きソファに沈み込んだ
事件を解決に導く鋭い勘が今は厄介な重荷だった。
彼女が嵌めるつもりなら、こんな回りくどいことはしない
蘭花の実力を知る味野には、
彼女の願いが個人的な何かから来ていると察せられた
しかしそれが何なのか聞く勇気もなかった。
蘭花が来るという明日を思うと、
戸惑いと期待が混ざり味野は無言でカーテンの揺れを見つめた