第12章 新たな事件
港の倉庫街の一角、
薄暗いアジトの部屋は煙草の煙で満たされていた。
蘭花は仮面を外し黒いパーカーのフードを下げ
テーブルを挟んでハンの前に立っていた
彼女の左肩の傷はまだ疼き昨夜の銃撃戦での味野との対峙が頭をよぎる
だが彼女の声は「烏の娘」として冷静で感情を抑えていた。
「報告は以上です。」
蘭花は昨夜の密売取引の経緯を簡潔に伝え、
警察の急襲と「烏」の迅速な撤退取引相手の組織との乱戦、そして何とか滞りなく終わったことを淡々と述べた。
ハンは煙草をくわえ、
灰皿に灰を落としながら黙って耳を傾けていた
彼の鋭い目は遠くを見ていて何か考え込んでいるようで
報告が終わると部屋に重い沈黙が流れた
蘭花はハンの視線を感じながら、
胸の奥でざわつく感情を抑えた
昨夜、味野を傷つけたこと
彼の「逃げろ」という声
――すべてが、彼女の心に重くのしかかっていた。
ハンは煙草を灰皿に押しつけそっと目を開いた
彼の視線が蘭花を捉え二人の目が合った
仮面のない彼女の顔は純粋でだがどこか疲れていた