第2章 影
彼は彼女をソファに押し倒した
少しでも力をいれると壊れそうな小さな体
「味野さん…?」
彼女の声は怯えていたが、どこか信頼が残っていた
味野の手は彼女のシャツを脱がせ肌に触れ行為は荒々しさとは裏腹にどこか優しかった
彼の手は震え彼女を傷つけないようにと理性の欠片が働いていた
「蘭花…。お前は、烏の娘だ」
行為の最中、味野は絞り出すように言った言葉に蘭花の目が見開かれた
「お前のボスは、俺の仲間を殺した。
俺はお前を…もう愛せない」
彼女の体が一瞬固まったが蘭花は抵抗しなかった
涙が頬を伝ったが、彼女の手は味野の背中にそっと触れる
「それでも…味野さんが好き。
こんな私でも助けてくれたから…」
行為が終わった後二人は乱れたベッドの上で
沈黙の中寄り添った。
味野の心は愛と憎しみの間で引き裂かれ
蘭花は記憶の空白と初めて感じた温もりの間で揺れていた
海の波音だけが、夜を満たしていく