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空白の少女と海の記憶

第12章 新たな事件



昼休み、味野は署の屋上に出た
風が微かに潮の匂いを運んでくる。
彼は手すりに寄りかかり遠くの海を見て
あのベンチで彼女と並んで座った夜を思い出した。
彼女の缶コーヒー、彼女の気遣う声

「蘭花…お前はどうやって生きてんだ?」

彼は呟き、ポケットからスマホを取り出した。
蘭花の番号は記憶を取り戻し彼女が家を訪ねてきた
あの日に登録していた。

しかし指は画面の上で止まった
彼女に何を言う? 謝罪か、愛の告白か。
それとも、ただの別れの言葉か。

味野はスマホを握りしめそっと目を閉じた

相棒の死、蘭花への愛、
すべてが心の中で渦を巻いた。
だが彼女の強さがほんの一瞬、彼に力を与えた

「…まだ、終わらせねぇ」

彼はスマホをポケットに戻し屋上を後にする
仕事が待っている。蘭花との距離は依然として遠い
味野はいつか彼女と向き合うために生き続けなければならなかった。


海の風が、彼の背中をそっと押した。



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