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空白の少女と海の記憶

第11章 蛍光灯のひかり




ベンチでの蘭花との短い時間が終わった後
味野は一人港の町を歩いていた。
空のコンビニ袋が風に揺れてカサカサと音を立てている。

ビールの苦味がまだ舌に残り
胸の奥のざわつきを抑えきれなかった

ずっと蘭花の顔が、頭から離れなかった
彼女の寂しげな目で強がりの笑顔が脳裏にチラつき
その行動さえ味野の心を抉るには充分だった。

「蘭花、お前はどうしたい...?」

彼は呟き夜の海を見やった
波の音が…
蘭花の声と重なる。

「味野...最近、どう?」

――彼女の軽い口調の裏に隠れた、深い悲しみ。
味野は気づいていた。
彼女もまた、闇の中で苦しんでいることを

気付いて目を逸らした。

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