第11章 蛍光灯のひかり
「…うん、だいぶマシ。動かすとちょっと…」
彼女の声は静かで強がりの色が薄く滲んでいた
味野の胸が締め付けられた。
あの夜、彼女を撃った瞬間が鮮やかに蘇る。
記憶が戻った彼女と話して以来、
味野は蘭花をますます強く意識していた
あの笑顔、涙、震える手。
彼女のすべてが彼の心に焼きついて離れなかった。
だが同時に彼女が烏の娘であることも仲間を殺した者の妹であることも消えない
蘭花は、缶コーヒーを少しキツく握りしめる。
彼女の心は別の重さを抱えていた
味野と話したあの夜彼女は自分の愛を貫くと決めた
だが、烏に戻ってからの日々
――人を傷つけ、脅し、闇の中で生きる日々――
は、彼女の心を少しずつ侵食していた
誰かを傷つけるたび、
味野の優しい笑顔が遠ざかる気がした
愛という感情がぼやけて掴めなくなっていく。
「ねぇ味野…最近、どう?」
蘭花が沈黙を埋めるように発する
軽い口調を装ったが声の端に寂しさがみえた