第11章 蛍光灯のひかり
「血の匂いがする…」
ある夜仕事を終えた蘭花はアジトに戻り
血の着いたシャツを脱ぎ捨て
黒のワンピース、薄手のパーカーに着替えてふらっとコンビニへ出かけた。
港近くの小さな店で
蛍光灯の白い光が冷たく感じられた。
彼女はパーカーのフードを被り、
レジで缶コーヒーを買い店を出ようとすると
その瞬間ガラスドアの向こうに見覚えのある背中が見えた
味野だった
蘭花の心臓が跳ねる
缶コーヒーを握る手がわずかに強ばった。
彼は制服ではなく普段着のラフな姿で、コンビニの袋を手にし静かに煙草に火をつけていた。
疲れた顔、こめかみの浅い傷が
街灯の下でかすかに見え疑問を感じるが気付かぬふりをした。
「あじ…の…」
蘭花の唇がつい動く
声は小さく、彼には聞こえない
だが味野が振り返り彼女と目が合う
一瞬、時間が止まった。
味野の目は驚きとこめかみの傷の痛みで揺れた。
蘭花の瞳は寂しさと抑えられそうにない感情に支配される