第10章 闇の日常
味野に会いに行ったあの日から、蘭花は彼に連絡を取らなかった。
烏の娘としての生活に戻り
彼女は再び闇の世界に身を投じた。
あれからどれだけの時間が流れたのか最早わからなくなっていた
ハンの指示の下
夜の町で情報を集め小さな取引を暗闇で進め時には銃を手に敵対する組織と対峙する
慣れた手つきでナイフをパーカーに仕込み暗い路地を抜ける
かつては緊張で震えた手も、
今は冷たくまるで機械のようで。
だが心の奥では寂しさが静かに広がっていた
「......味野」
蘭花は無意識に名を言葉にしすぐに首を振った。
あの家で過ごしたことが夢のようで
自分自身が幸せを求めることがどれだけ愚かか身に染みていた
会いたい。
だが会ってはいけない
彼は、ハンを組織を憎む警察
関わっては危険を伴う
それでも蘭花の心は彼を求めていた
左肩の傷は動きすぎるとまだ痛んだ。
包帯は薄くなったが傷跡は彼女に生きていることを
そして味野の存在を思い出させた