第2章 影
数週間後、
警察署での出来事がすべてを変えた。
「味野、知ってるか?烏の追加情報」
何気ない表情で同僚があるファイルの1ページを見せる。
そこには彼女の顔写真
ギャング組織「烏」の首領の娘、蘭花
いつも付けているマスクが外れ無表情な素顔が写真に追加されていた
「…嘘だろ?」
味野の手が震えた。
彼が助けた少女は、敵だった。自分が何年も追い続けた犯罪組織の一員、そして仇
怒りと裏切られた気持ちが胸の中で渦を巻いた
その夜、味野は家に戻ると
蘭花は台所で拙い手つきで夕飯の準備をしていて
「味野さん、遅かったね!
今日は私、頑張ってカレー作ってみたよ」
彼女の笑顔が、味野の心を締め付けた。彼女は知らない
自分が何者かを、
味野が何を知ったかを...。
「君が…」
味野の声は低く震えていて、彼は彼女に近づき肩を掴んだ。
蘭花は驚いたが抵抗しなかった
「味野さん、どうしたの? 何か…悪いことした?」
彼女の大きな瞳が味野を見上げる
その瞬間、味野の感情が爆発した。
怒り、悲しみ、裏切られた思い
そして、抑えきれなかった愛情...