第9章 気付いてしまった孤独
「寝不足だよ。事件が立て込んでるからな」
「そうか? まあ、無理すんなよ。
あいつのことも…まだ引きずってんだろ?」
仲間の言葉に味野の手が一瞬止まる
彼の笑顔が脳裏に浮かびすぐに蘭花の涙と重なった
彼は目を伏せ声を低くした
「…ああ、まあな」
彼はそれ以上追及せず肩を叩いて去った
ロッカールームに一人残された味野はコーヒーの苦味を感じながら胸の奥の重さに気づいた。
誰にも言えない
蘭花を愛してしまったこと
相棒を裏切った罪悪感も烏への憎しみも
すべてを心の奥に閉じ込めた。
「孤独、か…」
味野は呟き鏡を見た
自分の目には何も映っていなかった
業務が終われば彼女の声がまた響く。
だから仕事に逃げるしかない