第9章 気付いてしまった孤独
夕方署に戻った味野は、
コーヒーを片手にロッカールームで一息ついていた
鏡に映る自分の顔は疲れと無表情で固まっていて
左のこめかみに残る、浅い傷がかすかに痛む。
あの夜引き金を引けなかった自分を今もどこかで呪っていた
「味野。最近、なんか変じゃね?」
同僚の一人が隣でタバコをくわえながら問う。
彼は相棒の死後
味野を気にかけてくれる数少ない仲間だった
「目が死んでるぜ。寝てんのか? 女でもできたか?」
軽い口調だったが田中の目は本気で心配していた。
味野は無理に笑いコーヒーを飲んだ