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空白の少女と海の記憶

第9章 気付いてしまった孤独



彼女を撃ってから数週間が経っていた
味野はまだ心の傷を引きずったまま
警察署の雑然とした空気の中に身を置いていた
机には書類が山積みになり電話が鳴り響き、
同僚たちの声が響き合う

街の犯罪は尽きず今日も彼は新たな事件に没頭していた

「味野、
例の窃盗団の報告書上がってるか?」

署長の声に味野は顔を上げ短く答えた
「今、仕上げます」

彼の手はキーボードを叩き目の前のスクリーンに集中した。

窃盗団の動向、目撃証言、監視カメラの解析

頭をフル回転させれば考える隙がなくなる
それが彼にとって今は救いだった。

業務に没頭している間は自分の気持ちと向き合わなくていい。
血に染まった肩を片手で
抑え苦しむ彼女を思い出さなくていい

心の奥に押し込めた罪悪感が静かに眠ってくれる

「よし、次は現場検証だ」

味野はジャケットを羽織り、
パトの鍵を手に取った。

動き続けることで時間が流れる
止まれば彼女の顔が浮かぶ...
だから止まらない
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