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空白の少女と海の記憶

第8章 月下の決意




彼女は月に向かって呟いた
味野の涙、叫び声、震える手。
私を撃った罪悪感と亡魂した同僚への裏切り
蘭花は彼の痛みを想像するだけで胸が締め付けられた

「バカだな、って…貴方もだよ」

蘭花は小さく笑いグラスを手に取り残りの酒を飲み干した。
アルコールの苦味が彼女の弱さを少しだけ隠してくれた。



蘭花は深呼吸した
潮風が彼女の髪を乱し、月光が彼女を包む

「逃げたい。でも…逃げないよ。
味野、お兄ちゃん、私…全部向き合う」

彼女の声は弱々しかったがどこか確かな響きを帯びていて
強がりだったかもしれない。
心の奥底では、怖くてたまらなかった
でも蘭花は知っていた
愛することは痛みを抱えることだと

彼女はグラスを置きベランダを後にする
月は静かに海を照らし蘭花の小さな背中を見送った。

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