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空白の少女と海の記憶

第8章 月下の決意




アジトのベランダは、
港の倉庫街を見下ろす高い場所にあった

夜の海から吹く潮風が蘭花の髪をそっと揺らす
彼女は手すりに寄りかかり月を見上げていた
満月に近い月光が彼女の青白い顔を照らし
左肩の包帯を銀色に染めた。

手に持ったグラスには薄い琥珀色の酒
ハンが「女が飲むならこれくらいでいい」と渡してくれた軽いウィスキーだった
蘭花はグラスを傾けちびっと口に含むアルコールのほのかな熱が喉を通るが
心の冷たさは消えなかった。

「お前、ほんとバカだな」

味野の声が頭の中で響いた。
あの海辺の家で彼が小さく笑って言った言葉
軽い口調だったのになぜか胸に刺さり
蘭花はグラスを握りしめ唇を噛む

「馬鹿、か…」

蘭花は呟き月を見上げた。

彼の顔が浮かぶ
涙を流しながら叫んだ彼の声
私を撃った冷たい目が蘭花の心に刻まれ頭から離れなかった。

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