第7章 彼の影
味野は立ち上がりふらつく足で
壁に寄りかかる蘭花の言葉が
彼を前へ進ませようとしていた。
「私、味野と向き合うよ。憎しみも愛も全部抱えて」
彼女の強さに味野は救われたかったが
考えるほどに心は暗い淵へと沈んでいく
「前を向く? どうやってだよ」
彼は呟き引き出しを開けた
そこには警察官として支給された拳銃が眠っている
冷たい金属の感触が手に伝わり
「蘭花…俺には、お前を愛する資格なんてない」
味野は銃を手にソファーに座り直した
銃口を自分のこめかみに当て目を閉じ
相棒の笑顔、蘭花の涙、ハンの冷たい目。
すべてが頭の中で渦を巻いた。
「これで…全部終わるなら…」
彼の指が引き金に触れる
しかしその瞬間蘭花の声が再び響いた。
「味野も、ね」