第7章 彼の影
味野の視線が棚の隅に置かれた写真に落ちた。
そこには若い頃の彼と相棒が笑っている警察学校を卒業した日
二人でビールを飲みながら夢を語った。
「味野、お前は正義の味方だろ?
俺もだ。一緒にこの街を守ろうぜ」
彼の笑顔が味野の胸を抉った
あの夜烏の銃撃戦で彼は味野を庇い
ハンの放った弾に倒れ味野は彼を抱き血に濡れた手で叫ぶ
「おい、死ぬな! 頼む…!」
あの時の言葉は彼に届いたのだろうか
「なぁ…俺は…お前を裏切った
お前の仇の妹を…愛しちまった。
許してくれなんて…言えねぇよ…」
蘭花を愛することは彼への裏切りで
彼女を撃った罪、彼女を抱いた夜の罪
そして今彼女を愛し続ける罪
すべてが味野の心を押し潰した