第1章 海辺の家
波の音が響く浜辺で味野は少女を見つけ、彼女は濡れた髪を砂に広げ意識を失っていた。
薄汚れたパンツと血が滲んだシャツ。
味野は警察官としての勘を働かせながらも、まず人として動いた。
「大丈夫か? 聞こえるか?」
彼は彼女をそっと抱き上げ、近くの自身の家へと向かった。
冷たい肌に自分のジャケットをかける。
味野からみた彼女は小さかった
目覚めた時、彼女は何も覚えていなかった。
自分の名前も、
なぜ海にいたのかも。
ただ味野の低い穏やかな声に安心を覚えた。
「ここは俺の家だ。
ゆっくり休め…焦らなくていい」
味野の家は、海辺の小さな一軒家。
警察署での激務を忘れるための、簡素だが温かい場所だった。
彼女はそこで味野の作るスープを飲み窓からの海を眺めた。
彼女の笑顔はまるで子供のようで
「味野さん優しいね。
こんな人、初めてかもしれない…」
その言葉に、味野の胸は温かくなったが
同時に彼女の過去を知らない不安が心の隅に影を落とした。