第6章 家の中の静寂
「知る? 何をだよ!
俺がどんな気持ちでお前を抱いたか?
憎しみと愛がぐちゃぐちゃになって頭がおかしくなりそうだった。
お前を撃った時、俺の心は死んだんだ!」
彼の声は嗄れ一筋の涙が床に零れ落ちた
「なのにお前は…なんでそんなこと言うんだ?
なんで俺を…許そうとするんだ?」
蘭花は首を振った
「許すなんて…簡単じゃないよ。
私だって怖かった。肩の傷がこうやって痛むたびにあの時の貴方の顔を思い出す」
彼女は包帯に触れ顔を歪めた
「でも、味野が私を助けてくれたことも、忘れられない。
あの時作ってくれたスープの味、笑顔
…全部、本物だったよね?」
味野は言葉を失い彼女を見つめた
彼女の目は憎しみではなくただ真っ直ぐな想いを映していた
「本物だった…」
彼は呟きそっと椅子に座った
「蘭花、俺は…お前を愛してる。
でも、俺には資格がない。
お前を傷つけた俺には…そして………」
警察の文字を飲み込んだ
蘭花は彼の前に立ち、
少しばかり震える手で両手で彼の顔を包み
「資格なんて私が決める。
味野は敵でも、私の大事な人だよ」
彼女の涙が味野の頬に落ちた
「ハンには…お兄ちゃんにはこうやって話してるって言う。
私が選ぶのは、味野と向き合うこと
憎しみも、愛も、全部抱えて」