第6章 家の中の静寂
味野の家はまるで時間が止まったように静かで
窓から差し込む夕陽が木の床に長い影を落とす。
蘭花と味野はシンプルな木のテーブルに向かい合ってに座っていた
波の音が遠くで絶え間なく響く
蘭花の左肩は包帯に覆われ、痛みが彼女を現実に引き戻していた。
だが彼女の目はかつての純粋さと
記憶を取り戻した強い意志を宿している
向かい合う味野は目を伏せ握りしめた拳をテーブルに置いていた。
「蘭花…なんでここに来た?」
味野の声は低く、震えがまじっている
まるで自分の言葉が彼女をさらに傷つけることを恐れるように…
蘭花は深呼吸し、胸の奥で渦巻く感情を抑えた。
「味野…記憶が戻ったよ。全部
烏のこと、ハンのこと…そして、味野さんと過ごしたこと」
彼女の声は静かだったが言葉の端々に抑えきれない熱が滲んでいた。
「あの夜のことも…味野が私を…」
彼女は言葉を切り唇を噛んだ。
味野の顔が歪んだ
「言うな、蘭花。あの夜……俺は…」
彼は立ち上がり壁に背を預け目を閉じ頭を振る
「俺はお前を傷つけた。撃った。…それなのに、なんでそんな目で俺を見るんだ?」
蘭花は立ち上がりゆっくり彼に近づいた。