第5章 葛藤
「味野…いるよね?」
蘭花の声だった。
味野の心臓が止まりそうになりながらも
そっとドアを開け彼女を見た。
左肩に包帯を巻き、少し青ざめた顔
だがその目はかつての純粋さを取り戻していた。
「蘭花…なんで…」
味野の声は震えている
それを知ってか知らずか彼女は一歩踏み出し彼を見つめた。
「記憶が…戻ったよ。
味野のことも、全部覚えてる」
彼女の声は静かだったが力強く味野から視線を動かそうとせず言葉を続けた
「あの夜のことも。
…でも嫌いになれない」
強い瞳で見上げる彼女に味野は顔を顰めて膝をつき
「俺は…お前を撃った。お前を、傷つけた」と呟く
蘭花はそっと彼に近づき、震える手で彼の頬に触れた。
「味野は優しかった。
ハンを撃つ時私が飛び出して前に出た
あの時、銃口が揺れたの…
ちゃんと知ってる。だから…」
彼女の目からひと筋涙がこぼれた。
「だから話したい。
ちゃんと、向き合いたい」