第1章 1
今度は俺が目を丸くする。
その様子に、ラルゴが目を細めた。
「ホンマに聞こえとらんかったんやな」
「聞こえんかった…」
俺がはぁ、と息を吐くと、レグがダンテと同じように荷物を解きながら言った。
「まぁこれで合点がいった部分もあるけどな」
「ん?」
「この街は神官が『姫様』って、守護神を大切にしていると見せかけて、本質は神官が牛耳っとるっちゅうわけや」
「牛耳るって言い方は行き過ぎかもしれんけどな。…現にそこまで街の人は苦しんどらんようやし」
ダンテがレグの言葉に補足を入れる。
部屋の外に煙草を吸いに出とったドルチェが戻ってきた。
「なぁ、思い出したんやけど、部屋って1人一部屋あるって言っとらんかったっけ?」
「あぁ、そういえば言ってたね」
「んじゃ何で、レグとダンテの2人がここで荷物をばらしとるん?」
「あ、ホンマや!!」
ドルチェの指摘に、レグとダンテの目が点になる。
その様子に、ラルゴが手を叩きながら爆笑しとる。
「しゃあないなー…んじゃ俺が移動するか」
レグが頭を掻きながらまた荷物をまとめる。
一方、荷物を解き終えたダンテが俺を見て言った。
「そういえばレガート、さっきも訊いたんやけど、トイレに行ったとき、何かあったんか?」
「えぇ!?あ…いや…べ、別に何も無かったで…」
「あ、何やその様子…怪しいな」
自分の荷物を担いだドルチェが、ニヤリと笑う。
うっ、と俺は言葉に詰まった。
気が付くと、全員がニヤニヤと俺を見とる。
俺は自分の荷物を持ち上げて、吐き捨てるように言った。
「別に…神殿の中で迷って、『姫様』とやらに道を教えてもらっただけや!!」
────しばしの沈黙。
「……で?」
「で?とは?」
「レガートは『姫様』に惚れたんか?」
「んなっ!!??」