第1章 1
「姫様、そろそろ」
アリアの後ろに立っとった神官が、俺らにも聞こえるような声でアリアに声をかけた。
アリアはやや後ろを見、躊躇いながら頷いた。
それからまた俺らに向き直り、先程と同じように優雅に頭を下げる。
「私はこれで失礼致します。旅の疲れをゆっくりと癒してくださいませ」
「えっ…」
「あとは神官のコーダが皆様をご案内致します」
「ご案内…って…」
「今晩はどうぞ神殿にお泊まりください。お部屋も用意してございます」
アリアの後ろに立っとった神官が、一歩前に出る。
その神官にスッと目をやってから、アリアはもう一度俺らに頭を下げ、別の神官達に護られながら部屋を出ていった。
────俺らは、ただ呆気に取られて立ち尽くすしかなかった。
♪♪♪
「なんっやねん、あれは」
コーダ、という神官に案内された部屋に入り、神官の足音が遠ざかると不満気にドルチェが言った。
「なーにが『姫様』や。あんなん操り人形みたいなもんやないか」
「ドルチェ」
ダンテが荷物を解きながら、ドルチェをたしなめる。
「ここは神殿内やで。神官が周りで聞いとるかもしれん。程々にしとき」
「う゛~~」
ドルチェは尚もブツブツ言っとる。
「でもあれは酷いな」
「うんうん」
「酷いって……何が?」
俺が訊くと、メンバーが目を丸くした。
「何が…って」
「レガート、聞こえんかったんか?」
「だから…何が」
4人は呆れたようにはぁ、とため息をついた。
「あんな、さっき『姫様』が挨拶したやろ」
「あぁ」
「あれな、ほぼ全部、後ろにいたコーダっちゅう神官が後ろから『姫様』に囁いて、言わせとったんや」
「何やて…!?」