第3章 3
「一番最初にあんたが姫様に耳打ちをしとるのを見た瞬間は、さすがに腹が立ったけどな、あんたからは姫様に対する悪意は感じられんかった」
「……」
「それなら、これからあんたがどうやって姫様をサポートしていくか、それによってこの街も何かが変わるかもしれん……良い方向にな」
コーダは歯を食いしばりながら、涙を落とさないようにしとる。
ドルチェは笑った。
「カデンツァの街と、姫様を頼むで」
コーダは顔を上げ、大きく頷いた。
その動きに合わせて、涙が落ちる。
俺とレグ、ラルゴ、ダンテもその様子を見つめとった。
「っしゃぁー!!」
叫びながらドルチェは、大きく伸びをした。
「日も昇るし、そろそろ行くか」
「そうやな」
「そうだね」
「行くか~」
メンバーが俺を見る。
「「「「どうするん?」」」」
「どう…って…何がや」
俺は首を傾げる。
その俺の様子を見て、メンバーはニヤリと笑った。
それからドンッと俺の背中を押す。
「うわ!!」
勢いで一歩前に出た瞬間、強い風が吹いた。
あ!!と俺が振り向いた時、ドルチェの
「先行っとるで~♪」
という声が聞こえた。
────置いていかれた。
俺はため息をついてから、ゆっくり広場に目をやった。
悲しそうな顔で俺を見とるアリアと目が合う。
俺は口ごもり、頭を掻いた。
「あー…」
──こういう『別れ』は慣れとらん。
何を言えば良いかと、俺はモゴモゴと口を動かした。
「えっと…」
「レガート、私ね」
俺を見上げながら、アリアが口を開いた。
「私…これからカデンツァの街に出て、いろんなことを知ろうと思う。
私の知らない、いろんなことを。
コーダやグラーヴェ…二人以外の街の人にもいろいろ訊きながら…。
………だからね、レガート…だから……。
──お願い──いつかまた、絶対にカデンツァに来て」
俺は目を見開く。
それから、笑って頷く。
「当たり前やろ」