第3章 3
──チャリ、と剣を構える音。
「まぁまぁ、もうちょい2人だけの世界に浸らせてやってや」
煙草に火を付けながらドルチェが言う。
グラーヴェは今にも飛びかかりそうな雰囲気を漂わせとる。
「……っつーか、これくらいえぇやん」
「何!?」
「別にレガートは何もしとらんやろ」
そう言うドルチェを、キッと睨むグラーヴェ。
「今時19歳にもなって、恋の1つや2つもしたことないヤツなんておらんやろ」
「黙れ『Arc』!!」
グラーヴェは、ゆっくりと煙草を吸うドルチェに飛びかかった。
ドルチェははぁ、とため息をつき、手に持った短剣でグラーヴェの剣を受け止めた。
「……分からんヤツやな」
半分イライラしながらドルチェが呟く。
「レガート!!そろそろ行くで!!」
俺はドルチェを見て、頷いた。
ドルチェが俺の隣に付くと、ヒュウッと風が俺らを包む。
次の瞬間、俺とドルチェは広場より一段高い崖の上におった。
───そこには、レグとラルゴとダンテの姿もあった。
俺がアリアの側から離れたのを見て、慌てて数人の神官がアリアに駆け寄る。
「何だ!?」
「───たかが『神官』っちゅう役職のちょっと力を与えられただけの人間が、神の恋愛に口出すなや…!!」
「何だと!?」
「我々を侮辱するのか!?」
「"たかが人間"だと!?お前ら楽典集団こそ、何の力も持たぬ人間だろうが!!」
「………傲るな人間ども……!!」
低くレグが唸った。
そのドスの利いた声に、神官達が怯む。
「楽典集団・『Arc』の正体、教えてやろうか」