第3章 3
「でもアリアは成長して、女神としての力も強くなった。その気になればいつだってアクロポリスから出られる位にまで、強くなっとったんや。けど、アクロポリスから出なかった。
なぜや?」
「……結界が…怖かった……。また…弾かれたらどうしよう、って…」
アリアは唇を噛んだ。
俺は頷く。
「だから結界に近付かなかった。せやから強くなった自分の力にも気付かんかった。だから結界をくぐれることも分からんかった───そういうことや」
アリアが俯く。
「加えて、アクロポリスの外に出なくても事が足りるよう、神官達も手配しとった。自分を弾く程の結界を作る神官達を、アリアも信用しとった。……そして『操り人形』のようなアリアが出来た」
ポロポロとアリアの目から涙が零れ落ちる。
俺は唇を噛み締めて涙を落とすアリアの頭を、軽くポンポンと叩いた。
「俺の言いたいこと、分かるか?」
アリアが泣きながら俺を見る。
「──もう、自由なんやで。」
「………っ!!」
スルリと、俺が叩いとった頭を揺らして、アリアが俺にしがみついた。
「うぁ!!」
瞬間、顔を赤く染める俺。
しかし、しがみついとるアリアの口から洩れてくる嗚咽に、さっきと同じようにただ頭を叩くしか出来んかった。
口を開きかけて、つぐむ。
……アカン。
危うく言っちゃならんことを言うとこやった。
恐らく……今のアリアだったら絶対に頷くだろう。
……それはアカン。
この街から…カデンツァからアリアを奪ったら、アカンのや。
俺が天を仰いだ時、アリアが身体を離した。
涙を拭いながら、アリアが口を開く。
「レガート、お願いがあるの」