第3章 3
♪♪♪
神殿のあるアクロポリスのすぐ近くに、広場があった。
アクロポリス自体が小高い丘にあるから、必然的にその広場も街よりも高い所にあることになる。
さっきドルチェとレグが花火をしたって言っとった広場と、同じ所なんやと思う。
───初めてのアクロポリスの外、初めての本物の木々、初めての本物の地面、初めての本物の外界の空気。
───そして何より、この暗闇。
アクロポリスを出た直後、アリアが怯えとるのが伝わってきた。
「大丈夫やで。すぐ慣れる」
そう言ってギュッと手を握ると、アリアもギュッと握り返してきた。
「大丈夫…レガートが一緒だから……」
俺に遅れまいと、必死に走っとるアリア。
きっと後ろから神官達が追って来とるはず……。
速度を緩めることも出来ず、俺はただ、アリアを励ましながら走るしかなかった。
この先で神官達に追い付かれるのは分かっとる。
……だけど追い付かれる前に、アクロポリスに連れ戻される前に、アリアに見てもらいたいものがあるんや……。
走ることしばし。
俺らが走っとる獣道のような道を、大きな枝と葉が覆っとった。
それをアリアの手を握っとらん方の手で払いのけると、視界が開けた。
「着いた…」
獣道から広場へと踏み込み、肩で息をしとるアリアを見ながら、ゆっくりと広場に案内する。
……広場の端、木々が切り倒されて出来た展望台。
そこで足を止めたアリアは息を飲んだ。
「わぁ……」
そう呟いたきり、アリアは言葉をなくした。
「どうや?」
俺が声をかけると、アリアは目を輝かせながら振り向いた。
「スゴいキレイ…!!レガート、キラキラしてる…あれは何?」
俺は笑った。
「あれがカデンツァの街や」