第3章 3
「大丈夫。俺もおる」
アリアが俺を見て、目を見開いた。
俺はアリアに笑いかける。
俺の笑顔に一瞬、顔を綻ばせたが、またアリアの顔が曇った。
「でも…レガートも結界に弾かれるかもしれないわ…」
「そんなら、何で入る時に弾かれんかったんやろな」
「え…」
俺は呟きながら石柱の間───結界をすり抜けた。
何の抵抗も衝撃もなく、俺は結界の外に出た。
口をポカンと開けたままのアリア。
それに構わず俺は、掴んどったアリアの手を強く引いた。
「きゃっ……」
ゆっくりと、つんのめるようにアリアの身体が結界をくぐる。
そのまま勢いでトトトッと2、3歩歩いたアリアが前に倒れそうになり、俺は慌ててアリアの身体を抱き止めた。
「大丈夫か?」
俺の腕の中、アリアは何が起きたのか分からない、というように呆然としとる。
「レガート……私…結界を…」
「何にも起こらなかったやろ」
そう言ってアリアに笑うと、アリアは小さく頷いた。
俺は、石柱の奥に見える神殿を見つめる。
───暗闇の中、ポツ、ポツ、と点り始める灯り。
……何も起こらなかったとはいえ、気付かれたか……。
「行くで」
俺はアリアの手を引いて、また走り始めた。
───その先には、暗闇が広がっとった……。