第3章 3
広い廊下を抜け、神殿の入り口から外へ出て、石柱へと走る。
あと数歩で石柱、という所で、アリアが叫んだ。
「待って!!レガート!!」
俺はその声に足を止める。
肩で息をしとるアリアは、とても苦しそうや。
「あ…すまん…」
首を横に振るアリア。
それからはぁはぁと息を落ち着かせながら、石柱の間を指差した。
「…あそこには…結界があるわ…」
「あぁ、知っとる」
「きっと……通れない…」
ギュッと、胸の飾りを握り締めるアリア。
今度は俺は首を傾げた。
「通ったこと、あるんか?」
───通ったことがあるということ。
それはつまり、アクロポリスの外へ出たことがあるということや。
アリアは……首を横に振った。
「小さな頃に…一度……外に出ようとして…結界に弾かれたの…」
そう言って#アリア#は俯く。
「痛くて、とてもビックリして…怖くなって……。……それから…ここへ来ないように…外に出ないようにしていたの…」
「それは何年くらい前や?」
「…10年…くらいかしら…」
───10年。
10年もの間、ずっとアリアは自ら神殿───アクロポリスの中にいることを選んできたんか。
アリアが今まで外に出なかったのは、宿の女主人が言っとったように、『神官に閉じ込められていた』という理由だけではないようやな。
………もちろん、その元々の原因は神官達にあるだろうけど。
「外へ、出たいと思ったんか、その時」
俺の言葉に、アリアは静かに頷いた。
「じゃあ、行くで」
「えっ…」
でも結界が…と心配そうに言うアリアの手を引く。
「10年前と今とはちゃうやろ」
言い聞かせるように言った言葉に頷いたが、それでもアリアは不安そうな顔や。