第2章 2
アリアが一曲歌い終わった。
形だけ拍手をして、ドルチェが立ち上がる。
「明日の朝出発やし、荷物まとめなアカンから先に戻るわ」
「あ、俺も」
「僕も」
「レガートはどうする?」
「俺も……いや、もうちょい」
「……そうか」
ダンテはやんわりと笑った。
と、先に歩いて行きかけとったドルチェが、何かを思い出したように戻ってくる。
「今日はレガートも街に泊まるんやろ?ここな、宿」
宿の住所と名前を走り書きしたメモを俺に渡し、ドルチェはレグ達と共にミュージアムから去っていった。
一人取り残された俺は頬杖をつきながら、ステージの上で笑って歌うアリアを見とった。
♪♪♪
目の前の鉄板が、ジュッと音を立てる。
その直後に蒸気と共に広がってくる、何とも言えん香り。
「美味そう……」
「ラルゴ、よだれよだれ!」
ダンテに指摘されて、ラルゴは慌てて口許を拭った。
その様子を見て、目の前の鉄板で、さっき獲れたばかりだという巨大なエビを料理してくれとる、宿の女主人が笑った。
「お腹いっぱい食べていっとくれ。そしてまたこの街に来ておくれよ」
「いっただきま~す」
差し出された皿の料理を早速頬張るラルゴ。
隣に座っとるダンテが心配そうに見つめる。
…その手に、水。
「ん゛っ!?」
案の定、料理をのどに詰まらせて、ラルゴは目を白黒とさせる。
水を求めて伸ばした手に、ダンテは水の入ったコップを手渡した。
「あっはっはっはっ!!良いコンビネーションだ」
豪快に笑う女主人を尻目に、涙目で苦しそうに息をするラルゴと、その背中を叩くダンテ。
「あんたもしっかり食べていっとくれ。……神殿の料理には負けるけど、それなりに美味いと思うよ」
にっこりと笑う女主人。
俺は目の前に出された料理をつまむ。
「……美味い…!!」
「あら、嬉しいねぇ。…あんた見たとこ料理を作るのも食べるのも好きそうだし、良かったら作り方を教えてやろうか」
「あ、是非!!」
嬉々として女主人から聞いた作り方をメモする俺を見ながら、女主人ははぁ、とため息をついた。
俺は顔を上げる。
「もう、帰っちまうんだねぇ……」
「え?」