第2章 2
俺らが席に座ると同時に、ステージの裾からアリアがゆっくりと出てきた。
その瞬間聞こえた、わぁっという大きな歓声。
「スゴい…」
───改めて、アリアがカデンツァの街の人に大切に想われとることを思い知らされる。
歓声が徐々に静かになっていき、ミュージアムがしんと静まり返ると、アリアはミュージアム内を見回してから、一度目を閉じ、口を開きながらまた目を開けた。
………ららら……♪
アリアが歌い始めたのは、噴水の側でいつも口ずさんどった歌。
───これはある一定の位を持った者のみが歌える、この世界を讃える歌。
そして俺は……この歌をずっと前から知っとる。
「…はぁー」
「ま、こんなもんやな」
「そうやね」
「…辛口やな~…」
アリアの歌を聴いて、ため息をついたドルチェ、ポツリと呟いたレグ、それに頷いたラルゴ、レグとラルゴに苦笑いをするダンテ。
「まだまだこんなんじゃ、街を守る女神とは言えんな」
ドルチェの言葉にメンバーが頷く。
──何かが足りない。
メンバーが思っとるであろうことは、こういうことや。
もちろん、俺も思った。
歌い方は上手いけれど、今のアリアの歌からは……『意志』が感じられん。
「街の人はこれで満足なんやろうけど…」
「全然やな。これじゃホンマに、『歌わされとる』感じや」
ステージの上のアリアは笑顔で歌っとる。
とても気持ち良さそうに、とても楽しそうに。
「これだと、"上"は納得せんやろなぁ…」
「うん……きっと神官達も気付いてないね、姫様からいろいろなものを奪ってるって」
俺は口をつぐむ。
───鳥かごの中の鳥は、空が恋しくはないんやろか。