第2章 2
「…お願い…?」
「……明日、『Arc』の演奏後に私も歌うから、私の歌を聴いてほしいの」
俺は俺に向かい合って立つアリアを見た。
作り物の月の下、凛と立つアリアからは女神の色が見えた。
──俺は頷く。
それを見て、アリアはとても嬉しそうに笑った。
「約束よ」
「あぁ、約束」
笑みを交わし合い、俺らは別れた。
作り物の月は、静かに、優しく輝いとった。
♪♪♪
翌日はやはり、とてもスッキリとした青空が広がっとった。
演奏最終日、この日もありがたいことにガイアミュージアムは多くの街人でいっぱいやった。
「あ~今日で最後か~」
伸びをしながら誰にともなく言うドルチェ。
「やっぱり始まるとあっという間やね」
楽器を弄りながら呟くラルゴ。
「これで明日からまた馬車の旅か」
若干嫌そうに顔をしかめるレグ。
「ま、次の街も決まっとるし、今日は目一杯楽しもうや」
スティックをクルクルと回しながら笑うダンテ。
──俺はミュージアムの空を見上げとった。
「よーし!!!!ほんなら行くで!!」
ドルチェが気合いを入れて隣に立っとったダンテの手を取る。
メンバーがそれに倣って、隣のメンバーの手を取り、俺らは丸く円を作った。
「本日最終日!!気合い入れて行くぜ!!…せーの…」
「「「「「っしゃあー!!!!!」」」」」
演奏は大きな拍手の中、多くの笑顔を残して終了した。
手を振りながらステージを後にする俺ら。
汗を拭い、渡された冷たく冷えた水を飲む。
「美味い!!」
「冷えとると美味いな~」
レグとダンテが美味そうに水を飲み干す。
すると、俺らがいる空間の空気が突然、ピリッと張り詰めたのが分かった。
──前にも感じたことのある空気…。
俺は周りを見回した。
───しゃん、と涼しげに何かが揺れる音。
音がした方を見て、俺は全身の動きを止めた。
…瞬きさえ忘れとった。
ゆっくりと、美しい衣装に身を包んだアリアが歩いてきた。
俺らは道を開け、小さく頭を下げる。
すれ違い様、アリアは俺を見てにこりと笑った。
後ろ姿を見送って、俺らは予め用意されとったミュージアム全体を見渡せる席へと向かった。
途中、ラルゴが小声で話し掛けてくる。
「『姫様』、キレイやったね」
「……あぁ」
俺は小さく呟いた。