第2章 2
───結局、今日の演奏終了後、ホンマに俺だけ神殿に残してメンバーは街に降りた。
別に俺らは街に出ることは禁じられとらんから、演奏が終わってからドルチェとレグが宿を探したらしい。
メンバーが神殿から出ていって、あのコーダとかいう神官を始めとする多くの神官が、ホッと胸を撫で下ろしたようや。
神殿内の雰囲気も、いくらか軽くなったように感じる。
見張られてはいなかっただろうけど、やっぱり警戒はされとったんやろうなぁ……。
……俺も…明日は街に降りなあかんな……
♪♪♪
「…え…?」
隣に座るアリアの目が見開かれて、大きく、丸くなる。
その目を直視出来ず、俺は頬をポリポリと掻きながら俯いた。
「だって…出発は…明後日でしょう?」
「いや…そうなんやけどな…」
「じゃあ何で…?何で…神殿を出て街に泊まるの…?」
「えーと…それは…」
神官の目が気になるから、とは言えん。
だってそれは……アリアのせいやないから…。
俺が口の中でゴニョゴニョと言っていると、俺の顔を覗きこんどったアリアが身を引いた。
「もしかして……コーダ?」
俺は唾液を飲み込んだ。
ギュッと音がして、それがアリアの問い掛けに対して肯定の返事をした形になった。
俺は身体を固くし、アリアははぁ、とため息をついた。
「……ごめんなさい…。私が頼りないから…」
小さく呟いたアリアの声に悲しみと諦めを感じて、俺は顔を上げた。
「それじゃあ、こうやって話が出来るのも、今日で最後なのね」
静かに、悲しげにぽつりと呟いたアリア。
俺は頭を下げた。
「…すまん」
アリアが首を横に振る。
「謝らないで…。───楽しかった。……レガートがしてくれた話。……食べ物とか、人とか、星とか。私が見たことの無い『外』の話……。いつか私も……本物の星が見たいな」
俺は唇を噛む。
アリアは立ち上がり、噴水から離れていき、振り向いた。
「レガート。いろいろな話を聞かせてくれてありがとう」
それから俯き、小さく言った。
「……一つ、お願いがあるの」