第2章 2
♪♪♪
「今日と明日、この神殿を出て街に泊まろうと思う」
ドルチェがそう言い出したのは、カデンツァ滞在3日目、演奏2日目の朝のことやった。
メンバーと打ち合わせをして、ベランダで演奏前の一服中だった俺は、室内のドルチェを振り返って見た。
「やっぱな~、この神殿に泊まっとるとな、神官達に見張られとるような気になって、落ち着かんねん」
ドルチェはイスの背もたれに頬を押し付けながら、小声で呟いた。
レグもそれに頷き、肯定する。
「それは自意識過剰っちゅうもんやないか?」
「ちゃうねんって!!絶対見張られとるって、俺ら!!」
「『姫様』に手を出そうって考えとるからやない?」
「それはない。『姫様』はレガートに譲るって言ったやろ」
レグはそう言うと、な、と俺を見た。
俺は眉間にシワを寄せると、レグから目を逸らして煙草の煙を吐いた。
「あ、でも神殿から出て街に泊まることになったら、『姫様』に会う回数が減るな…どうする?レガート」
ニヤニヤと笑いながら、レグが俺に訊く。
俺は煙草を灰皿に押し付けながら言った。
「別に…ええんちゃ「あ、それかレガートだけ神殿に残るとか」」
「あ、なるほど。それで良いんやない?」
ドルチェが手を叩いてレグに賛成する。
「なっ…ちょっ…ちょい待ち!!」
「えぇやん、それで」
「良いことあるか!!」
俺が焦ってテーブルに手をつき、叫ぶように言うと、カタンと灰皿が跳ねた。
ドルチェとレグはイェーイとハイタッチをしとる。
俺は顔を手で覆い、大きくため息をついた。