第1章 1
口ごもったままの俺に、更にアリアが言った。
「じゃあ…最初はあなたについて聞かせて」
「お、俺??」
───お、俺の何を話せば良い!?好きな食い物か??好きな匂いか??
「まず…あなたのお名前は?」
「お、俺は……レガート…っていいます、はい…」
「レガート。素敵な名前ね」
──アリアに名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。
ゆっくりアリアの方を見ると、アリアは俺の方に身を乗り出すようにして、俺の顔を見とった。
目が合うと、にっこりと笑う。
「私はアリアっていうわ。改めて、よろしくお願いします」
アリアが小さく会釈をする。
俺も慌てて頭を下げて、それに返した。
「レガート、って呼んで良いかしら?私も『姫様』とかじゃなくて、『アリア』って呼んでほしいのだけど…」
「え、あ、良いんですか…?」
俺が小さく訊くと、アリアは大きく頷いた。
「私からのお願い」
ダメかしら?と、小首を傾げるアリア。
俺は慌てて首を横に振った。
「い、いや、全然ダメじゃないです…よ?」
「もう一つ…敬語もやめてほしいの…。レガートとはもっとたくさんお話がしたいから…」
そう言って、アリアは萎縮したように小さくなった。
俺は更に慌てて、今度は首を縦に振った。
「わ、分かった!!敬語は使わんようにする!!」
その瞬間、アリアの顔に笑みが広がる。
───ホントに嬉しそうな、笑顔。
……胸が苦しくなった。
俺は、アリアに気付かれんようにギュッと、膝の上の手に力を込める。