第9章 酔いの夜、消えない温もり ※微
その様子を、相澤は静かに見ていた。
口には出さないが、細い目の奥で何かが僅かに揺れた。
相「山田、新入りをからかうな」
相澤の低い声がテーブルを撫でたように響く。
しかし、いつもよりほんの少しだけ圧がある。
マ「え~?俺、今むしろ被害者なんだけど?」
相「黙って飲め」
そう言いながら、相澤はの前にそっと料理を置く。
さりげなく、マイクとの距離が少しだけ離れる位置に。
「……あ、ありがとうございます」
相「冷める前に食べろ」
短い言葉。
でも、その仕草はやけに自然で、迷いがない。
マイクは、相澤が自然にの前へ皿を置いたのを見た。
——ああ、なるほど。
胸の奥で、ほんのわずかに何かが引っかかる。
認めたくない感情ほど、静かに刺さるものだ。
マ(……ふぅーん)
視線だけを相澤へ向ける。
マ(あの相澤が、か)
無意識に、グラスを持つ指に力が入った。
笑って流せる程度のことのはずなのに、なぜか視線を逸らすのが少しだけ遅れた。
マ(……俺だって、だろ)
誰にも聞かせない、心の中の呟き。
それを誤魔化すように、マイクは小さく息を吐く。
マイクは何事もなかったように顔を上げる。
マ「さーて!まだまだ飲むぞォ〜!」
大きな声で場を戻しながら、視線は一度だけへ。
楽しそうに笑う、その顔を、自分が見つめていた時間のほうが長かったはずなのに。
相澤は、気づいていない。
この場で一番、静かに焦っている人間が誰かなんて。