第2章 はじまりの時、与えられた役割
はそれからずっと、いつどんな個性が出るのかそわそわしていた。
そして旅行から帰宅した次の日、母が料理しているのをも手伝っていた時のこと。
母「いたっ!!」
母が包丁で指を少し切った。
「だいじょうぶ?」
少しだけ指から血が出ている。
「いたいのいたいの、とんでいけ!よーし、よーし」
母の指をさすっていると、ふわりとあたたかい光が現れる。
「わぁ!?」
光が消えた時には、母の指の傷は跡形もなく消えていた。
母「!!!もしかして…これが個性?傷が治せるの?」
「わたしのこせい?」
母「えぇ…!きっとそうよ!」
「…………もっと強くてかっこいいやつがよかった」
母「何言ってるの!貴重な治癒個性よ…!!!」
病院へ行って医者に診てもらう。
医「これは素晴らしい……!“快気”という個性だ。細胞を活性化させ、触れることで外傷も内側も治癒できる。今の時代、とても重宝される。今すぐにでも力になって欲しい、いくらでも援助が出る」
母「!すごいわ!!!」
この日からなにもかもが変わってしまった。
個性は、病院の“決められた人間の前でのみ”使うこと。
幼稚園が終われば病院へ行き、次々と運ばれてくる怪我人を治す日々。
「DNAから薬を作りたい」そう説明され、毎週血液を採られた。
ニュースになることはなかったが、噂は広がり、患者は増え続けた。
1年後。
は、もう疲れていた。
誰を治したのかも、どんな顔だったのかも、覚えていない。
ある日、いつものように手を当てても、光は現れなかった。
それでも、「血液だけでも必要な人がいる」と言われ、採血には通い続けた。
補助金は十分で、母は仕事を辞めた。
2人は、静かに暮らすようになった。
は、人を助けたいと思っていた。
でも憧れていたのは――戦う、強くてかっこいいヒーロー。
テレビで見るオールマイトは輝いて見えた。
もう自分には届かない光のように。