第6章 新たな日々、非合理的な感情
相「……まだ、飲み足りないか?」
「え?……なんでわかったんですか?」
相「……全然落ち着いて飲めてなかっただろ。酒、美味しそうに飲んでたし、好きなんだろ」
一拍。
相「……まだ飲みたいのかと思ってな」
「……実は」
少しだけ、困ったように笑う。
「帰りにコンビニ寄って、家で飲もうかなって思ってたところでした」
へへ、と照れたように笑うその顔は、お酒のせいか、さっきより少し柔らかい。
相澤は一瞬だけ視線を逸らした。
相「じゃあ」
自然な口調で、当たり前のように。
相「今度は、静かなところで飲むか。何の酒が好きだ?」
「えっ……いいんですか?」
相「俺も、もう少し飲みたい」
「……じゃあ……」
少し間を置いて、子供みたいに小さな声で。
「日本酒……飲んでみたくて。向こうにはなくて……こっちきてスーパーで見ても種類多すぎて、結局選べなくて……」
言い終わる頃には、少しだけ頬が赤い。
相「……なるほど」
相澤は小さく息を吐いて、歩き出す。
相「奇遇だな。俺も日本酒好きだ」
一歩、歩幅を合わせる。
相「行こう。近くに、落ち着いた店がある」
並んで歩き出す。
夜風が少し冷たくて、無意識にが相澤の方へ寄った。
その時また、指先が、相澤の手に触れた。
一瞬だけ、互いに動きが止まる。
相澤は何事もなかったように、そっと歩調を緩めただけだった。
相「…段差ある。気をつけろ」
「あ……ありがとうございます」
触れた手はもう離れているのに、胸の奥が、やけに落ち着かない。