第6章 新たな日々、非合理的な感情
相澤の胸が、微かにざわついた。
は苦笑しながら、首を振る。
「さすがに、そんなこと…」
ミ「まぁまぁ♡恋する時は一瞬なんだから♡ほら、恋はハリケーンって言うじゃない?♡」
マ「……だな」
マイクはを見て、少しだけ視線を逸らした。
マ「気づいた時には、もう逃げられねェもんだ」
相澤は黙ったまま、グラスを置く。
相(…恋だの愛だの、非合理的だ。くだらない)
そう思おうとした。
――なのに。
なぜか、その“くだらない話題”が、頭から離れなかった。
マ「なァ、」
少しだけ、真面目な声。
マ「じゃあ…、今までに好きな人がいたことは?」
店の空気が、ふっと静まる。
「……あります」
即答だった。
ミ「おっ?」
相澤も、視線だけ向ける。
「子どもの頃、ですけど」
マ「へぇ……どんなヤツ?」
は、少しだけ懐かしむように目を伏せた。
「優しくて……強くて」
言葉を探すように、ゆっくり。
「いつも“ヒーローになる”って言ってました。そのために、すごく努力してて」
一瞬、指先がぎゅっと握られる。
「…よく怪我もしてました」
ミ「……あら」
「だから、その度に治してたんです。私の個性で」
マ「……なるほどな」
マイクは、妙に納得したように頷く。
マ「が“治す側”になった理由、ちょっと分かった気がするぜ」
少しだけ、言葉を選ぶように。
マ「その人は今なにしてる?……連絡とか、取ってねェのか?」
は、一瞬だけ息を止めた。
それから、ゆっくりと首を横に振る。
「…もう、いないんです」
店のざわめきが、遠のく。
「亡くなりました。ずっと前に」
静かな声。