第6章 新たな日々、非合理的な感情
「…キスです」
マ「は?」
相「…………」
「口同士で触れることで、男性に限り……」
言いづらそうに、でも真っ直ぐ。
「普段の治癒よりも、何倍も早く回復させることが出来るそうです」
ミ「“そうです”?」
「実際には、使ったことがありません」
マ「じゃあ、なんで知ってるんだ?」
「…幼い頃からお世話になっている病院の先生が私の個性を詳しく調べてくれて。理論や可能性をまとめた資料を、渡してくれたんです」
ミ「……なるほどね」
「でも」
少しだけ、真剣な表情。
「傷の深さによっては、意識を失う可能性が高いと書かれていて。だから……使うことなんてほぼないと思います。意識失って足でまといになったら嫌ですし…」
その言葉のあと、ほんの一瞬。
誰も、すぐには声を出さなかった。
マ「……」
マイクはグラスを口に運びかけて、ふっと止まる。
マ(軽く言ってるけどよ……この子、ちゃんと覚悟の話してんだよな)
相澤は、静かにを見る。
派手さはない。
英雄願望を語るわけでもない。
ただ、現実を理解した上での選択。
相(……合理的だ。無茶をしない。それでいて、必要な時は覚悟を決めるタイプだな)
思わず、評価が一段上がった。
マ「……いい判断だと思うぜ」
珍しく、少しだけ低い声。
マ「自分の限界わかってねェヒーローほど、周りを巻き込むもんはねェからな」
「……ありがとうございます」
ミ「ふふ」
ミッドナイトが、急に空気を緩めるように笑った。