第15章 離れる覚悟、近づく気持ち ※微
ホテルを出てから、どれほど時間が経っただろう。
は、自分の鼓動の速さと、呼吸の浅さにすら気づかないほど、ひたすらに走っていた。
電車も車も使ったはずなのに、記憶に残っているのは、冷たい風と胸を刺すような焦燥感だけだった。
保須市の中心にある大病院。
ニュースで流れたあの現場から、そう遠くない距離。
病院のエントランスに着いたは、正面受付に駆け寄る。
「雄英の、教師です。負傷した生徒たちの病室を……!」
「お名前を――」
「です。A組担当の教師です!」
職員が目を見開く。
というその名は、すでにテレビで注目され、世間に知られ始めていた。
「3人は今、10階の病室に」
「ありがとうございます!」
一礼し、すぐさまエレベーターに駆け込む。
閉じられる扉の中で、は震える手をそっと胸元に添えた。
病室の前で深呼吸をしたのは、ほんの一瞬。
扉をノックし、そっと開けた。
轟「?」
ベッドに座っていた轟が、誰よりも先に気づいた。
その声に反応して、緑谷と飯田が振り返る。
飯「さん…!」
緑「わざわざ来てくれたの……!?」
3人の顔には包帯や絆創膏、そして疲れと痛みの色が残っていた。
それでも、彼らは無事だった。
視界が滲み、何度も唇をかみしめ、ようやく言葉を吐き出す。
「……無事で、よかった…!」
そのまま、ベッドに歩み寄り、ひとりひとりの手をそっと握る。
轟の火照った手。
緑谷の震える指先。
飯田の力が入らない腕。
「ごめんね、すぐに駆けつけてあげれてたら…」
その言葉に、3人は慌てて首を振る。
飯「ち、違うんですさん!僕が勝手に動いたんです…!」
緑「止められないくらい…未熟でした。あれは、僕のエゴで…!」
轟「俺たちの責任だ。が悪いわけじゃない」
その声に、は目を見開く。
どんなに痛んでいても、彼らはもう前を見ようとしていた。
「怖かった。3人の名前が、ニュースに出てて…。見知らぬ誰かじゃなく、私の大切な生徒だった」
堪えきれず、涙が一粒だけ頬を伝う。
その綺麗な涙を見た3人はそれぞれ想いを馳せていた。