第15章 離れる覚悟、近づく気持ち ※微
ジ「感情の抑制、これを出来るように。たかが挨拶のキスごときでそんなに感情剥き出しにしていたらダメだ」
爆「たかがだと?」
ジ「大人の世界は子供には理解できないことが沢山ある。そしてヒーローとは、しばしば理不尽に立たされる職業だ。誰かの命がかかっている時に、個人的な感情を爆発させることなど許されない。怒るな、とは言わない。だが、怒りを制御できないうちは、真のヒーローとは言えない」
爆豪は歯を噛みしめた。拳を握り、顔を背ける。
ジ「悪かったな、驚かせて。爆豪安心しろ、何もしていない」
爆「っ…!!!クソが!!!」
爆豪はジーニストを睨みつけたまま、舌打ちをひとつ落とす。
爆「チッ……ムカつくもんはムカつくんだよ」
吐き捨てるような口ぶり。
けれどその声には、どこか押し殺すような苦味が滲んでいた。
“やってない”と言われて、それで納得できるほど簡単な話じゃない。
あの距離、あの仕草、あの視線――
目の前で見せつけられた光景が、胸の奥に黒い熱を落としていく。
怒りとも悔しさともつかない感情が膨れ上がるのに、ぶつける先が見つからない。
だから爆豪はただ拳を握りしめ、視線を床へ落とした。
その後、爆豪と目が合うことはないまま、はジーニストに改めて礼を告げた。
そして最後に、久しぶりの疲労回復を施してから事務所を後にする。
ジ「……やはりは凄いな。個性の使い方も、立ち居振る舞いも、以前とはまるで違う」
「ありがとうございます。でも……あっちでの生活は、楽しいだけじゃなかったです」
ジ「……アメリカでの暮らしは、どうだった?」
少しだけ真剣な声。
からかいも、余裕もない問い。
は一呼吸置き、静かに答える。
「強くなれました。体も、心も。――守られるだけじゃなくて、守れる側でいたいって思ったんです」
笑ってはいる。
けれどその瞳の奥に、確かな覚悟が宿っていた。
その一瞬、ジーニストは言葉を失った。
昔の少女の面影は確かにあるのに、そこに立っているのはもう立派なヒーローだった。