第15章 離れる覚悟、近づく気持ち ※微
窓枠に足をかけたところで、ホークスはふっと立ち止まる。
振り返らず、夜風に声を乗せるように。
ホ「……無理、せんでね」
それだけで、胸がきゅっと締めつけられた。
一拍置いて、少しだけ声が低くなる。
ホ「……夜、冷えるけん。風邪、引かんごと」
それは別れの言葉じゃない。
約束も、次も、未来もない。
ただ、今ここにいるを想う言葉だけ。
ホークスはもう何も言わず、窓の外へ身を投げた。
羽音が遠ざかっていく。
部屋に残された静けさが、やけに広く感じた。
小さい頃、恋をしたことはある。
胸が高鳴って、相手のことでいっぱいになって。
それなりに苦しくて、甘かった。
……でも、こんなのとは違う。
胸の奥が、じんわり痛い。
息をするたびに、何かが欠けていくみたいで。
抱きしめられた腕の温もり。
唇が触れた瞬間の、あの熱。
思い出すだけで、胸が張り裂けそうになる。
嬉しいのに、苦しい。
近づいたはずなのに、遠くなった。
これが恋なのかどうか、には分からなかった。
ただ、ホークスが去ったあと、心にぽっかりと穴が空いたみたいに、どうしようもなく寂しかった。
心ここにあらずのまま、は機械みたいに支度を済ませた。
シャワーの音も、ドライヤーの風も、何一つちゃんと覚えていない。
ベッドに横になると、静けさが一気に押し寄せてくる。
あの声、あの体温、羽がかすめた感触。
思い出すたびに、さっきまで必死に押し込めていたものが溢れ出す。
どうして、あんな顔で去っていったの。
どうして、理由を何も言ってくれなかったの。
答えのない問いだけが、頭の中を巡る。
気づけば、頬を伝うものが枕を濡らしていた。
声を殺したまま、はそのまま眠りに落ちた。