第15章 離れる覚悟、近づく気持ち ※微
「……あの」
ふと思い立って、口を開く。
「ホークスさんの本名って、聞いてもいいですか?」
ホ「本名かぁ…」
一瞬だけ、視線が宙を泳ぐ。
ホ「…遠い昔に、捨てたよ」
「捨てた…?」
ホ「そう。だから俺の名前はホークスだけ」
いつもの調子で、軽く笑ってみせる。
でも――
「“ホークス”っていうのは、誰よりも速くて、かっこいいヒーローの名前ですよね」
そう前置いてから、は静かに続けた。
「じゃあ、本当のあなたは?」
ホークスの視線が、ぴたりと止まる。
「誰かのために羽を落としても、飛び続けてる人。それでも前に出て、戦ってる……優しいあなた自身のことを、私は知りたい」
ホ「……っ」
喉が詰まる。
ホ「そんなこと、知ってどうすると?」
「“名乗る名”に意味があるなら、“本当の名”には、もっと意味があると思うんです」
迷いのない声。
「私はヒーローも、生徒も……みんな、名前で呼びたい。肩書きじゃなくて、その人自身をちゃんと見たいから」
まっすぐな瞳。
逃げ場のない言葉。
――まずい。
そう思った時には、もう遅かった。
孤独で埋めてきた心の隙間に、という存在が、音もなく入り込んでくる。
ホ「…………啓悟」
気づけば、口が勝手に動いていた。
ホ「……鷹見、啓悟」
「啓悟……」
その名前を、確かめるように呼ばれる。
「素敵な名前」
その瞬間。
胸の奥を、ぎゅっと掴まれたような感覚が走った。