第13章 全力の先、静かな想い
会場内を歩いていると、シンリンカムイとMt.レディに出くわした。
「おはようございます、森児(しんじ)さん、優(ゆう)さん!今日はよろしくお願いします!」
シ「あぁ。……おはよう、」
シンリンカムイは一瞬言葉を選ぶようにしてから、柔らかく微笑む。
自然な仕草で近づき、ぽん、と軽く頭に手を置いた。
シ「…無事でよかった。倒れたと聞いた時は肝を冷やした」
「ご心配おかけしました。でも、もう大丈夫です!」
その言葉に、シンリンカムイは少しだけ安心したように目を細める。
シ「そうか。…ならいい」
声は落ち着いているのに、手はすぐに離れなかった。
名残惜しそうに、そっと撫でてから離す。
Mt「あなたのせいで私の注目度が下がってるんだけど!!」
Mt.レディはぷくーっと膨れている。
……かわいい。とてもかわいい。
スタイルもいいし個性も強い、羨ましい。
「でも、優さんの強さもスタイルも誰にも真似できませんよ。憧れてます!」
Mt「……ふふっ、そう言ってくれるなら許してあげる♡ ほんと素直で可愛い♡」
その様子を見て、シンリンカムイがくすっと小さく笑った。
シ「…その素直さ、現場じゃ武器だけどな。無理だけはするなよ」
「はい!」
まっすぐな返事に、また目を細める。
シ「…終わったら、また事務所の近くで会うかもな」
それは何気ない一言だったが、どこか“次”を含んでいた。
Mt「はいはい、名残惜しそうにしない!そろそろ持ち場よ!」
2人に手を振り、はその場を後にする。
この日はリカバリーガールと共に救護係になっており、基本は1年ステージで待機する。
相澤はマイクと1年ステージの実況席にいた。
ついに体育祭がマイクの声と共に幕を開ける。
ヒーロー科の入場が始まり、夜空を切り裂くように花火が上がる。
「「「「わぁぁぁぁ!!!」」」」
歓声が渦を巻き、会場は一気に熱を帯びた。
——それぞれの想いを胸に秘めたまま。