第1章 Z=16 医者×魔導士=多忙な日々
「…ふぅ。」
ルーチェがあらかた診療を終えた頃には、お昼を少し過ぎていた。
さすがにぶっ通しでの診療は応えたのか、その場にへたりこむ。
「お疲れ様、ルーチェ。ご飯、用意したよ。」
「あ、ありがとうございます。」
へたりこんでいる所にターコイズが魚のスープをもって現れた。
ルーチェはそれを受け取ると、ターコイズも隣に腰をかけた。
2人は無言でスープを飲む。
「……この味、懐かしい。」
「そう言って貰えると嬉しいね。あんた、ろくに食べてないでしょ。
そんなに痩せちゃって。」
ズキッ
ルーチェは食べてたスプーンを加えたまま胸に広がる痛みで固まった。
「なんだい、どうした?体調でも悪いのかい?」
ターコイズは急にスプーンを加えたまま固まるルーチェに違和感を覚える。ルーチェに触れようと、手を頭に乗せた時、異変を察した。
「どうしたんだ?一体なにが…」
ターコイズは心配そうに声を掛けると、ルーチェははっとする。
加えたままのスプーンを下ろして、静かに声を出した。
「いや、亡くなった母みたいなことをいうんだな、とおもって。」
「お母さん?あぁ、生き別れたと言う。」
「…はい。母様も、結構お人好しで、それで…自分も忙しいのに私のためにご飯作ってくれてて…」
「あぁ、そうだったんだね。ルーチェ、あんたは愛されてたんだね。」
ターコイズの言葉にハッと目を見開く。
ルーチェは異変を悟られないように、といつものペースで無言でスープを飲み干した。
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