第1章 Z=16 医者×魔導士=多忙な日々
ルーチェは千空達が丸く収まったところを見守ると、運んでいた麻が入った籠を持っていたことを思い出した。
麻がおかれているところに籠を置き、千空に持ってきたことを伝え、去ろうとした。
「あ、あの、ルーチェさん。」
ルーチェは足を止め、千空と杠の方へちらっと視線をやる。
ルーチェを呼び止めたのは杠だった。
「その、ルーチェさんも協力してほしい、です。たくさんの糸と布が必要なので…」
杠が困ったような顔をしながらお願いをする。
こちらもどうしたものかと千空の方をみると、俺からも頼むわ、とのお言葉。
二人からのお願いにお人よしのルーチェは断ることはできず、ただ無表情のまま、二人に向き直る。
「わかった。そのかわり、条件がある。」
「じ、条件、ですか…?」
何を要求されるのか、と二人は身構える。
(ドラコ要求されたらどーしよぉ。いま壱円ももってないし…)
杠が混乱している。ルーチェはそんな杠にお構いなく、条件を口にした。
「条件は、私は診療所で作業をすること。材料さえもってきてくれたら、できた布はちゃんと持っていく。だめ…?」
「あぁ、作業場所の話でしたか。いいですけど…理由を聞いても?」
「…魔導を使って効率を上げる。」
「あ、そっか。ルーチェさんは、魔導士、でしたものね。」
「そういうこと。余計な混乱防ぐためにも、ね。」
その言葉にパチン、と手を打って納得したように言う杠。
ルーチェは、それじゃ、よろしく、とだけ告げると足早にその場を後にした。
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