第1章 光を厭い 光に憧る
翌日、事態は大きく動いた。
雄英高校の教師らの証言と警察が聞き込みで得た犯人の特徴が一致、更に生徒が林間合宿に現れた脳無に発信機を付けており、今も位置情報を追えることが判明したのだ。
この好機を逃すまいと急遽警察とオールマイトを含むプロヒーロー達の合同チームが編成され、敵連合のアジトと推定される横浜市神野区のバーと倉庫に強制捜査を仕掛けることになった。
公安の末端である私には関与できない領域。
これで敵連合を一網打尽にできる。
……はずだった。
実際、合同チームは敵連合をあと一歩のところまで追い詰めた。
だが、そこへ乱入したオール・フォー・ワンによって状況が覆された。
拉致されたプロヒーローと生徒こそ救出できたものの、敵連合の大半に逃亡を許した上、激しい戦闘で神野区の市民にも被害が出る事態に。
そして何よりも国民に衝撃を与えたのはオールマイトの事実上の引退。
この日、日本は平和の象徴を失った。
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公安委員会 会長から敵連合への潜入捜査の話を聞かされたのは、それから間もなくのこと。
あれだけのことがあったのだ。
こちらも大きく舵を切るのは当然だと理解できる。
ただその時は公安委員、あるいは警察官の中から潜入捜査員を選定するものだと思っていた。
だが、続く会長の言葉に白失は強烈な衝撃を受けることになる。
「敵連合への内偵はプロヒーロー ホークスが行います」
え、
何を、言っているの?
「あなた達にはホークスとの連絡役を担ってもらうわ」
あまりの衝撃に会長直々の指令が頭に入ってきているのかよく分からなかった。
それよりも白失の目はゆっくり開いたドアに釘付けになる。
入ってきたのは黄金色の髪と揃いのジャケットに身を包んだ男。
背中にある紅色の大きな翼がよく目立つ。
その男は間違いなくテレビ画面の向こうで羽ばたいていたウィングヒーロー ホークスその人だった。
嘘でしょ、
なぜヒーローがここにいるの?
なんで?
どうして?
ここはヒーローがいるべき場所とはかけ離れた所なのに……
駄目だ。
こ ん な と こ ろ に い て は い け な い。
頭の中に鳴り響く警鐘とは対照的に彼はにこやかに会釈する。
「どうも、よろしくです」