第5章 それは瞬く星のように
ホークスの優しくて力強い腕は白失に幸せだった幼い頃を想起させた。
優しかった、でもなくしてしまった両親の姿が重なる。
「……本当は、」
ホークスの背中にそっと手を伸ばす。
つい2ヶ月ほど前にはあった大きな翼が今は見る影もなく小さくなっている。
「本当はもう休んでほしいです。剛翼がこれだけしか生えてこない程の大怪我をしているんです。治療に専念すべきです。いくらセントラル病院の医療技術が高いといっても怪我を治す時間が必要だと思います」
「でもこんな俺にもまだできることはある。途中で投げ出すことはできません」
「……そう言うと思いました」
逆境の中でもヒーローを夢見て、その夢を決して諦めずに実現させたあなたはそう言うに違いないと。
「すみません、でも白失さんもそれが予想できていたから羽根を集めてくれたんですよね?」
困ったように眉を下げ、それでも彼の決意は変わらない。
「これ、使わせてもらいます。出し惜しみはしませんよ」
「はい、そのために譲っていただきましたから。その代わり……ちゃんと帰ってきてください」
「分かってます。お互い最善を尽くしましょうね」
「はい……」
約束してほしいとは言えなかった。
敵側の個性が非常に強力だから。
必死に羽根をかき集めてきたけれど、彼の立派な翼を形作るにはまだ全然足りなくて、
でもこれが今できる最善で、
「じゃあ、行ってきます」
まばらになった翼を広げ、ホークスが群訝山荘へ飛び立っていくのを白失は見えなくなるまで見送った。
―了―