第5章 それは瞬く星のように
だがホークスは真剣な表情でビデオメッセージを聞いている。
やがてメッセージを見終わると、
『荼毘の言う通り、俺の本当の名前は鷹見啓悟です』
「!、じゃあ羽飼というのは……」
『公安にまるっと素性を書き換えてもらったんです』
そして世間に明かしていなかった自分の過去をかいつまんで伝えた。
『実はだいぶ小さい頃から公安にいるんですよ、俺。公安で訓練を受けてヒーロー免許を取りました』
「……公安所属のヒーローになることと引き換えの保護なんて、そんなもの、脅迫と同じではないですか」
若干怒りを滲ませる白失にホークスは笑って答える。
『俺にとっては救いの手でしたよ。公安に拾われずに母親と一緒に路頭に迷っていたら、とてもヒーローになんてなれなかった』
確かに公安の訓練は厳しかったし、彼女に言えないような汚い仕事もやってきた。
でも嫌気がさす前に目良が気づいてくれて話を聞いてくれたし、何より憧れていたヒーローになれたのだから、これ以上のことはない。
“ヒーローはテレビの向こう側の存在で、同じ世界にいるなんて思ってなかったんですよね”
ホークスの笑顔に怒気を抜かれ、白失は以前彼が口にしていた言葉を思い出した。
ある出来事がきっかけで向こう側と地続きだと分かったとも言っていた。
この“ある出来事”とは父親がエンデヴァーに拘束された時のことを指しているのだろう。
―お前の親、敵だったんだからヒーローになれる訳ねぇだろ!―
―そうだそうだ、敵の子供がヒーローなんておかしい!―
かつて言われたことを真っ向から否定してくれる存在。
たとえ親が敵でもヒーローになれる。
ホークスはその体現者だったのだ。
嬉しいような、救われたような、今まで感じたことのない不思議な高揚感が白失の胸の奥から流れ出てきた。